顎関節症arthrosis
顎関節症は一生涯で2人に1人はなると言われている身近な症状です。命に関わるようなことや日常生活に著しく支障をきたすような怖い病気ではありません。20~30代をピークに症状が出やすいとされていますが、現代医学では明確な原因は謎のままです。
症状について
下記の3つが代表的な症状です。
- 口を開閉すると音が鳴る
- 口を大きく開けられない
- 口を開けると顎関節が痛い
メカニズム
顎関節(耳の穴の前あたりにあります)は、頭の骨のくぼみに下あごの骨がはまる構造をしています。はまっている部分には骨同士が擦れずスムーズに動くよう“関節円板”と呼ばれるクッションがあります。
このクッションの位置がなんらかの原因でずれると、下顎の骨が動いた時(=口を開けた時)クッションに引っ掛かります。この引っ掛かりを通過した時の音が症状①の音です。
さらに症状が進むと、この引っ掛かりを通過できなくなります。引っ掛かりを通過できないと下顎の骨が前方に移動しないので口が開けられなくなります(症状②)。 症状③は、顎関節の骨の変形によって起こります。
原因と治療法
現代医学では原因を1つに特定することができません。頬づえや歯ぎしり・片方でものを噛む・歯の噛み締め・うつぶせでの読書などの癖や、精神的な緊張・不安・気分の落込みといったあごには直接関係のないようなことが複数重なった時に起こると考えられています。
この他にも、怪我や睡眠不足・かたい枕・高い枕・楽器の演奏・球技スポーツなどがあり、これらの要因を1つも持っていない人はいないと考えた方が良さそうです。
要因が積み木のように複数積み重なっていたところに最後の1つが重なり、そして、崩れる。つまり、その人の耐久能力を越えた時に顎関節症の症状があらわれます。ですので、ある日突然症状が出たという患者さんも多いです。
顎関節症の治療は、積み上がった積み木を一つずつ下ろす作業に似ています。一つずつ下ろして耐久能力の範囲内におさまるようにするのです。
まずは、生活の中で無意識にしている癖がないかを思い出します。そして、意識して癖を一つずつ直していただきます。
患者さんの8割が行っている癖は“歯の噛締め”です。日中は意識してしないようにしてもらい、夜は必要であればマウスピースを作製して装着していただきます。本来の噛み合わせの位置が少しずれるように作りますので、夜中無意識に噛み締めることが難しくなります。
痛みがひどい場合は痛み止めを処方いたしますので、ご相談ください。また、対処療法になりますが痛みのある部分を蒸しタオルで温めることや、軽くマッサージをすることも痛みの緩和につながります。